夜が深まれば深まるほど、街の明かりが際だつようだ。はるか向こうには巨大なビルが黒々と連なり、そこがビジネス街であることを誇示している。22時。この時間でも働くものがいる。ちらほらと明かりが見える。ふと、アパルトメントの眼下に目を移せば、フルシティの絢爛な明かりが美しい。
吸い込まれそうな光の渦をぼんやりと眺めていたベニーは、大きなため息をついた。モデルという仕事は、いつも心身が削り取られるようだ。シャッターの音だけが、自分を覚醒させてくれる。高揚させてくれる。でも、それも一瞬のこと。終わればくたくただ。フルシティは今日も喧噪の中にあるのだろう。ビジネス街は今日も整然としていたのだろう。私にはどちらも似合わない。ふと、幼いころを過ごした小さな港町のことを思い出す。静かに音楽を鳴らす。無音でテレビをつける。そしてキッチンに向かう。
コーヒーをいれるのだ。なによりも、豆を挽く工程がベニーは好きだった。挽いた豆から漂う、カカオのような深く濃い香りが好きだった。寡黙な祖父と、豊かな笑顔の祖母を思い出す。あの二人も毎日コーヒーを飲んでいた。家にはいつも、コーヒーの香りが満ちていた。一連の工程を終え、ベニーは濃く深い色をしたコーヒーを真っ白で清潔なカップに注ぐ。見事なまでに美しいモノクロームが完成する。
そして、至福のひとときが訪れる。
フレンチローストは夜にぴったりのコーヒー。深煎り特有の香ばしさが口いっぱいに広がります。香り高いコーヒーの贅沢な余韻が心と身体を癒してくれます。一日を振り返りながらフレンチローストを。